この分業体制は企業に爆発的な成長をもたらした反面、構造的なジレンマを生み出しました。それが経営と所有の分離のメリットと問題点であり、現在も議論が絶えないエージェンシー問題の真相と対策へと直結しています。
メリットの最たるものは、経営の専門化と機動的な資金調達です。優秀な経営手腕を持つ人材を外部から広く登用できるため、創業一族の能力に企業の命運が左右されるリスクを排除できます。また、株主にとっても株式を市場で売買することで容易に資金を回収できる流動性が確保されます。
しかし、委任する側(プリンシパル=株主)と委任される側(エージェント=経営者)の間には、必然的に利害の不一致と「情報の非対称性」が生じます。これがプリンシパル・エージェント問題です。経営者が株主価値の最大化ではなく、自らの報酬引き上げ、保身、威信のための過大なM&A、あるいは非効率な内部留保の積み増しに走るモラルハザード(エージェンシー・スラック)が発生します。
この利害対立を調停するため、日本企業でも株式報酬(譲渡制限付株式:RSなど)の付与による利害共有や、モニタリング機能に特化した委員会制度の導入など、実効的な歯止め策の模索が続いています。