2010年10月に放送された『完成!ドリームハウス』のスペシャル回で登場した「土の家」。計画地となったのは、豊かな自然が残る神奈川県伊勢原市の丘陵地でした。施主夫妻が求めたのは、新建材や化学物質を極力排除し、自然の土へと還るエコロジカルで持続可能な住まいでした。
この極めて先鋭的なリクエストを引き受けた建築家が、素材の可能性を極限まで探求することで国際的にも知られる山下保博氏(アトリエ・天工人)です。山下氏は土という素材が持つ温もりや蓄熱性、そして環境負荷の低さに着目し、現地の掘削土を活用した「版築工法」と独自の土ブロックを組み合わせたハイブリッド構造を提案しました。
しかし、番組で視聴者の度肝を抜いたのは、その過酷極まりない施工プロセスでした。型枠の中に調合した土を流し込み、施主家族や全国から集まったボランティア、作業員が真夏の炎天下で重い杵を使い、ひたすら人力で突き固めていく光景が延々と映し出されたのです。度重なる降雨による工事中断、土の強度試験の難航、そして泥だらけになって疲弊する施主の姿は、テレビ的なドラマ性を極限まで高めました。
建築本体の工事費用は約2,700万円前後と公表されていましたが、規格化された住宅とは異なり、途方もない人工(にんく=労働量)が投入された特注建築でした。完成した建物は、まるで古代の古墳や蟻塚、あるいは洞窟を思わせる有機的な曲面を描き、一般的な住宅街の景観とは一線を画す異形のオーラを放っていました。