言葉が独り歩きを続ける中で、まず整理しなければならないのが「言葉の原点」です。蛙化現象という概念は、もともと2004年に跡見学園女子大学の研究グループによって提唱された心理学用語でした。グリム童話『かえるの王さま』において、不気味なカエルが魔法を解かれて魅力的な王子へと変わる筋書きの「真逆」が起きることから命名された経緯があります。
心理学における本来の蛙化現象とは、「片思い中は強く惹かれていたにもかかわらず、相手が自分に好意を抱いた(両想いになった)と分かった途端、相手を気持ち悪いと感じてしまう現象」を指します。つまり、問題は相手の具体的な行動や外見の失敗にあるのではなく、「自分に向けられた好意そのもの」に対する拒絶反応でした。
これに対し、2020年代にTikTokやYouTubeを中心としてZ世代の間で拡散された用法は、「フードコートでお盆を持ってウロウロ探す姿を見た」「改札でICカードが残高不足で引っかかった」といった、相手の少しカッコ悪い日常動作に冷めてしまう現象全般を指すスラングへと変化しました。この変容について、臨床心理士らは「本来は自己内省的な苦悩であった概念が、他者を品定めして減点するラベリングへと消費されてしまった」と警鐘を鳴らしています。流行語としての蛙化と、心療の場で扱われる蛙化には、見逃せない決定的な断絶が存在します。