女性に対する英語の敬称を理解する上で、まず押さえておくべきはそれぞれの語源と本来の定義です。古くはすべて「Mistress(一家の女主人・主婦)」という敬称から派生した言葉ですが、17世紀から18世紀にかけて未婚者と既婚者を区別する目的で分化しました。
ミス(Miss)は、伝統的に未婚の女性や少女に対して用いられてきた敬称です。省略形ではないため末尾にピリオドは付きません。一方のミセス(Mrs.)は、既婚女性、あるいは歴史的には「結婚して夫の姓を名乗っている女性」を指す敬称であり、省略語を表すピリオドを伴います(※イギリス英語ではピリオドを省く表記が一般的です)。
これらに対して、1970年代の女性解放運動(フェミニズム運動)を契機に広く普及したのがミズ(Ms.)です。「男性は未婚・既婚を問わず常にMr.(ミスター)と呼ばれるのに対し、なぜ女性だけが婚姻関係という私生活のステータスを公に開示させられなければならないのか」という不平等への疑問から、婚姻状況に依存しない女性の標準的敬称として定着しました。