オホーツク海に突き出た細長い知床半島には、驚くべき密度のヒグマが生息しています。道立総合研究機構などの調査に基づく知床ヒグマ生息数最新データによると、半島全体でおよそ500頭前後のヒグマが暮らしていると推計されており、世界的に見ても極めて過密な生息状況です。
知床の豊かな森を支えてきたのは、秋に川を遡上するサケ・マス類や、ドングリなどの堅果類です。しかし近年、海洋環境の変動に伴うサケの不漁や木の実の凶作年が周期的に発生し、餌を求めて行動圏を海岸線や人里近くまで広げる個体が増加しました。
食料を巡る個体間の競争が激しくなる中、母グマが子グマをオスの成獣から守るために、あえてオスの近づきにくい人間の生活圏近くに移動する事例も確認されています。生態系の微妙なバランスの上に成り立つ知床の自然環境は、気候変動や環境ストレスの影響をダイレクトに受けています。