犬神家の莫大な遺産相続争奪戦において、物語の両極を担うのが、狂気的な母性で一族を支配しようとする「犬神松子」と、佐兵衛の遺言状によって運命を翻弄される絶世の美女「野々宮珠世」です。
歴代大女優たちが魅せた「犬神松子」の狂気と気品
犬神家の長女・松子は、息子の佐清に全財産を継がせるためならば殺人をも厭わない冷徹な母親です。1976年版の高峰三枝子は、華族のような気品と冷徹な殺意が同居した圧倒的な威厳を放ち、煙管を燻らせる仕草ひとつで観客を圧倒しました。2006年版の富司純子、2018年版の黒木瞳、そして2023年NHK版の大竹しのぶに至るまで、日本を代表する大女優たちが自身のキャリアの集大成として松子役に挑み、狂気の裏にある母の哀切を表現してきました。
美しさと芯の強さを体現した歴代「野々宮珠世」
一方、佐兵衛の恩人の孫であり、佐清・佐武・佐智の三人のうち誰か一人と結婚することを遺言で義務付けられた珠世は、単なる悲劇のヒロインではありません。1976年版の島田陽子が見せた透明感と毅然とした態度は、おどろおどろしい因習に囚われた犬神家のなかで唯一の希望の光となりました。2006年版の松嶋菜々子、2023年NHK版の大島優子もまた、運命に抗いながら佐清への愛を貫く強い意志を宿した珠世像を作り上げました。