現地を訪れる前に知っておくべき盲点のひとつが、「御陵印(ごりょういん)」に関する誤解です。寺社の御朱印集めブームに伴い、「武蔵野陵でも参拝記念に御朱印帳に記帳してもらえる」と誤認して訪れる旅行者が後を絶ちません。
御陵印とは、歴代天皇陵を管理する宮内庁の陵墓監区事務所に保管されている公式の印章です。武蔵陵墓地内には「多摩陵墓監区事務所」が存在し、窓口で申し出ることで大正天皇(多摩陵)と昭和天皇(武蔵野陵)の御陵印を自己押印することが可能です。しかし、これは神社の御朱印とは根本的に性格が異なり、宮司や神職による墨書手書きは一切行われません。持参した印帳や専用の用紙に、自分自身で丁寧に朱肉をつけて押印する形式となります。また、事務所の開庁時間内(平日のみ対応の場合や職員巡回時の不在もあるため事前確認が望ましい)でしか扱えない点にも留意が必要です。
もうひとつの重要な見どころでありながら見落とされがちなのが、平成12年(2000年)に崩御された香淳皇后が眠る「武蔵野東陵」の存在です。昭和天皇の武蔵野陵とは木々の間を抜ける短い参道で結ばれており、まるで生前の仲睦まじいご夫婦の姿を映すかのように、ほぼ並ぶ形で寄り添っています。武蔵野陵の雄大な正面鳥居から参拝した後、東陵へと足を進めることで、激動の20世紀を支え合った両陛下の歴史の重みに深く思いを致すことができます。
さらに、敷地内でのドローン飛行や三脚・一脚を用いた本格撮影、飲食、ペットの同伴などは一切禁止されています。あくまで神聖な皇室の墓所であることを念頭に置いた、品格ある振る舞いが求められます。