『ONE PIECE』の誕生日設定を語る上で欠かせないのが、単行本巻末の質問コーナー「SBS(質問を募集するのだ)」の存在です。漫画作品におけるキャラクタープロフィールの多くは、原作者や編集部が非公開の制作設定ノートに書き留め、ファンブックなどで一方的に開示されるのが一般的でした。しかし本作では、全く異なるプロセスが採用されました。
発端は1999年に発売されたコミックス10巻でした。読者から「ナミの誕生日は7月3日(ナミ)、サンジは3月2日(サンジ)、ゾロは11月11日(ゾロ目)でどうでしょうか?」というハガキが届き、尾田氏が「よろしい。勝手に決めなさい」と軽妙に応じたことから、この巨大なムーブメントの幕が開いたのです。これ以降、読者の間では「まだ誕生日が決まっていないキャラを探し出し、納得感のある語呂合わせを考案してハガキを送る」という一種の知的ゲームが定着しました。
集英社関係者の証言や当時の担当編集者の回顧によると、単行本の刊行ペースに合わせて毎週のように数千通に及ぶ誕生日提案ハガキが届いていた時期もあったとされます。尾田氏は届いたハガキに丹念に目を通し、語呂合わせのリズムが良いもの、キャラクターの能力や特徴を鋭く突いたものを厳選して「公認」の太鼓判を押し続けました。ときには「もう決まってるっつの!」とツッコミを入れつつも、読者が考案した突飛なアイデアを面白がって即座に正史へと組み込んでいく柔軟な制作姿勢こそが、25年以上にわたってファンを飽きさせない強力な共創関係を築き上げたのです。