動物園の飼育ケージでは元気に動き回るレッサーパンダですが、野生界での生存率は年々厳しい状況に追い込まれています。レッサーパンダが絶滅危惧種に指定された最大の理由は、単一の原因ではなく複合的な人為要因によるものです。
第1の要因は、大規模な森林伐採による生息地破壊と分断です。道路建設、鉱山開発、農地開墾、薪(まき)の採取などによって、彼らの主食である竹が自生する原生林が次々と切り開かれました。生息域が孤立したパッチ状に分断された結果、個体群同士の交流が途絶え、近親交配による遺伝的多様性の低下が進んでいます。
第2の要因は、毛皮やペット目的の密猟です。独特の美しい赤茶色の毛皮は、一部地域で伝統的な帽子や装飾品として高値で取引されてきた歴史があります。さらに、近年でも裏ルートでのエキゾチックペット需要を狙った違法な捕獲・密輸トラップが後を絶ちません。
第3の要因は、気候変動と地球温暖化の影響です。レッサーパンダは標高1,500〜4,000メートルの冷涼で湿度の高い温帯林に適応しています。気温上昇によって主食のタケ類の生育可能エリアが標高の高い場所へと押し上げられており、彼らはより狭い山頂付近へと追いやられています。
第4の要因として、レッサーパンダの生態的な繁殖難易度が挙げられます。野生下でのレッサーパンダの寿命はおよそ8〜10年(飼育下では15年以上生きる個体も存在)ですが、メスの受胎可能期間は年にわずか1〜2日程度しかありません。一度に出産する頭数も1〜2頭と少なく、個体数の自然回復ペースが生息地破壊のスピードに全く追いつかない構造となっています。