簿価の基本を押さえたところで、実務や個人投資で直面する具体的な簿価の計算方法を確認します。実務上、大きく分けて「固定資産」と「有価証券(株式)」でアプローチが全く異なります。
1. 固定資産における簿価の計算式と減価償却
建物、機械、車両、パソコンなどの固定資産の簿価は、時間の経過に伴って価値が減少していくという考え方に基づき、減価償却と簿価の連動によって算出されます。固定資産は購入した年度に全額を経費化するのではなく、税法で定められた「法定耐用年数」にわたって分割して費用計上します。計算式は次の通りです。
期末簿価 = 取得原価 - 減価償却累計額
例えば、300万円で購入した営業用車両(耐用年数6年、定額法、残存簿価1円)の場合、年間50万円ずつ減価償却費として費用計上されます。1年経過後の簿価は250万円、3年経過後は150万円となり、6年が経過した時点で帳簿上には「備忘価額」として1円だけが残ります。この1円は「現物はまだ事業用として存在している」ことを帳簿上で証明するための象徴的な数字です。
2. 株式投資における簿価単価の計算ルール
個人投資家にとって極めて実用的なのが、株式の簿価とは何か、そして追加購入時にどう変化するかという点です。証券口座で同一銘柄を複数回に分けて購入した場合、保有株式の簿価は「総平均法に準ずる方法(移動平均法)」で簿価単価の計算が行われます。
具体例で見てみましょう。ある企業の株式を1株1,000円で100株購入(総額10万円)した後に、株価が下落したタイミングで1株800円で100株を買い増し(総額8万円)したとします。このときの計算は以下の通りです。
(100,000円 + 80,000円)÷ 200株 = 1株あたり900円
この結果、保有している200株の平均取得単価(簿価単価)は900円に書き換わります。この株式を将来1,200円で売却した場合、売却価格(時価)1,200円と簿価単価900円の差額である300円×株数が「譲渡益(課税対象)」となります。購入時の手数料も含めて簿価単価が形成されるため、損益分岐点を正確に把握するためには、この簿価単価の推移を常に正確に把握しておく必要があります。