池江選手が罹患した白血病の正確な病名について、当初は詳細が伏せられていましたが、後に急性リンパ性白血病(ALL)を中心とする造血器の腫瘍であることが報じられました。血液のがんとも呼ばれるこの病気は、骨髄の中で異常な白血病細胞が無制限に増殖し、正常な血液細胞が作れなくなる難病です。
治療は専門設備と無菌室を備えた都内の高度医療機関で進められました。当初は抗がん剤による化学療法が試みられましたが、合併症の併発や治療方針の再検討を経て、最終的に「造血幹細胞移植」を選択することになります。これは、抗がん剤や放射線で患者自身の病的な骨髄細胞を完全に破壊した後、ドナーから提供された正常な造血幹細胞を点滴で移植する極めて侵襲性の高い治療法です。
移植前後の日々は、文字通り地獄の苦しみでした。強い抗がん剤の副作用による激しい吐き気、高熱、口内炎、髪の脱毛。一時期は食事を一切受け付けず、ベッドから起き上がることすらできない日々が続きました。「一番つらかった時期は『死にたい』とさえ思った」と後に本人がドキュメンタリーで涙ながらに振り返ったほどです。体重は15キロ以上も激減し、鍛え上げられたアスリートの筋肉はすっかり削ぎ落とされてしまいました。