清潔に保ちたいという善意から行われる手入れの中にこそ、楽器の寿命を縮める最大の罠が潜んでいます。大手楽器メーカーのサポート窓口や楽器修理工房にも、誤ったお手入れによる変形や破損の相談が後を絶ちません。まず絶対に避けるべき3大NG行為のメカニズムを解説します。
1. アルコール消毒液・エタノールスプレーの噴霧
衛生意識の高まりから手指用消毒スプレーをそのまま楽器へ吹きかけるケースが多発していますが、リコーダーアルコール消毒NGは業界の鉄則です。多くの学校用リコーダーに採用されている「ABS樹脂」は、アルコールやエタノールなどの有機溶剤に接触すると、樹脂内部の分子結合が破壊される「ケミカルクラック(環境応力割れ)」を引き起こします。表面が白く濁るだけでなく、最悪の場合は演奏中に管体が真っ二つに割れる原因になります。
2. 煮沸消毒・熱湯をかける行為
哺乳瓶や食器と同じ感覚で熱湯を注ぐ行為も極めて危険です。ABS樹脂の耐熱温度は一般的に約70℃〜80℃前後。熱湯(100℃)をかけると、音の命であるウィンドウェイ(空気の通り道)やラビューム(エッジ部分)がミクロン単位で歪み、二度と正しい音程(ピッチ)が出なくなります。リコーダー熱湯消毒の危険性を甘く見てはいけません。
3. 木製リコーダーの丸洗い・つけ置き
木製リコーダーを水没させたり流水で洗う行為は致命的です。木材(カエデ、梨、オリーブ、ローズウッドなど)は急激な水分吸収によって膨張し、乾燥時に激しい収縮を起こして管体に深い亀裂が入ります。一度割れた木製リコーダーは、高額な修理費用をかけても元の音響特性を取り戻せないケースが大半です。