ここ数年、メディアで頻繁に取り上げられるのが、1杯数千円から1万円を超える「インバウンド向け高額海鮮丼」の是非です。ネット上では「築地は観光客目当てのぼったくり価格ばかりになった」という極端な言説も散見されます。しかし、この言説は一面的な事実に過ぎません。
確かにメイン通り沿いには、大トロやウニ、イクラを山盛りにした豪華絢爛な丼が外国人観光客向けに販売されています。しかし、市場関係者に聞き取りを行うと、「最上級ランクの本マグロや国産天然ウニの仕入れ原価は、近年の不漁と燃料高騰で劇的に跳ね上がっている。相応の素材を使えば原価率からしてその価格になるのは自然」という明確な経済的背景があります。粗悪なものを高く売っているのではなく、「最高級素材を贅沢に盛り付けた結果のハイエンド価格」というのが現場の真実です。
その一方で、メイン通りから一本路地に入った場所や、雑居ビルの地下・2階に目を向けると、地元の中央区民や市場の仕入れ担当者が日常使いしている「築地穴場ランチ」が今も健在です。たとえば、路地裏の「多け乃」では日替わりの新鮮な刺身定食や煮魚定食が千円台前半で味わえるほか、「魚河岸食堂」のフードコートでも手頃な価格でプロの味覚を楽しめます。「高い店しかない」というのは単なるリサーチ不足が生んだ誤解に他なりません。