暖簾をくぐった愛好家を最初に悩ませるのが、看板である2種類の手打ち蕎麦の選択です。高遠そば ますや メニューの柱となるのが「玄打ち(げんうち)」と「抜き(ぬき)」です。両者は蕎麦の実の挽き方と製粉設計が根本から異なります。
「玄打ち」は、外側の黒い甘皮(殻)を残したまま石臼で挽きぐるみにした田舎風の力強い蕎麦です。噛み締めるごとに野趣あふれる香りと力強いコシが口いっぱいに広がり、大根の強烈な辛味や焼き味噌のコクに決して負けません。一方の「抜き」は、外皮を綺麗に剥いた丸抜きを繊細に挽いた淡い緑がかった蕎麦で、なめらかな喉越しと上品で清涼感のある穀物本来の甘みが際立ちます。通の多くは、両方の違いを楽しむために「二色盛り」や追加の一枚を注文します。
ここで初心者が最も戸惑うのが、高遠そば 焼き味噌 食べ方の手順です。配膳されると、猪口には辛味大根の透明な絞り汁、別皿に香ばしく焦げ目のついた焼き味噌と刻みネギが供されます。
正しい作法として推奨されるのは、まず蕎麦をそのまま手繰り、素材の香りを確かめること。次に、辛味大根の汁だけを少しつけて啜り、大根特有の鋭い辛味と蕎麦の甘みのコントラストを味わいます。その上で、焼き味噌を箸先で少量削り取り、大根汁に少しずつ溶かしていきます。最初からすべての味噌を溶かし込むと塩気が立ちすぎて繊細な蕎麦の香りを損なうため、自分の好みの塩分と辛味のバランスを探りながら調整するのが美味しく食べ切る極意です。