「50メートル走の真の最速タイムは誰のものか?」——この問いに対して、陸上界のデータアナリストたちが提示する名前は別にある。人類史上最速の男、ウサイン・ボルトだ。
ボルトが2009年のベルリン世界選手権で100メートル9.58秒という驚異的な世界記録を打ち立てた際、ハイスピードカメラと超音波センサーによる詳細な区間分析が行われた。その結果、ボルトのスタートから50メートル地点の通過ラップタイムは「5.47秒」であったことが判明している。公認記録であるモーリス・グリーンの5.56秒を0.09秒も上回る、圧倒的なスピードだ。
ただし、この5.47秒はあくまで100メートルレースの「途中経過」に過ぎない。世界陸上連盟や国際オリンピック委員会(IOC)の公式規定において、独立した単一の種目記録としては認められない仕組みだ。それでもなお、人間が50メートルの距離を通過した最速の瞬間が5.47秒であることは動かしがたい事実であり、この非公式データこそが「人類最速の真実」をめぐる議論を今も熱く焦がし続けている。