ネットパロディが過熱すると懸念されるのが「著作権問題」や「著作者の不快感」ですが、刃牙シリーズにおいて特筆すべきは、原作者・板垣恵介氏および版元である秋田書店の圧倒的な懐の深さです。
板垣氏は過去のメディア取材やトークイベントにおいて、ネット上で流行するパロディやモノマネについて「自分の描いた絵がそれだけ多くの人に愛され、遊んでもらえるのは漫画家冥利に尽きる」「面白いものは素直に笑ってしまう」といった主旨の寛容なコメントを残しています。作品に対する絶対的な自信があるからこそ、読者の遊び心を受け入れる余裕が垣間見えます。
さらに公式側は、ネットのミーム文化をただ放置するだけでなく、見事に公式コンテンツへと昇華させました。その最たる例が、スピンオフ漫画『刃牙外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』です。ネット上で長年愛されてきた「異世界に送られた烈海王」というコラ発祥のネタを、秋田書店自らが公式連載として立ち上げ、大ヒットを記録しました。ファンの熱量を公式が公式の手で最高峰のエンタメに仕立て上げるという、現代のコンテンツビジネスにおける理想的な共創関係がここにあります。