この建築の真価は、建物単体ではなく周囲の自然との関係性にこそある。各務原市の豊かな山林と池が織りなす地形をそのまま受け止めるように配置されたランドスケープデザインは、人工物と大地の境界を巧みに曖昧にしている。
伊東豊雄のキャリアを振り返ると、2001年に世界へ衝撃を与えた「せんだいメディアテーク」で試みた、グリッド(格子)からの解放というテーマが直結していることがよくわかる。仙台でチューブ状の柱によって空間の流動性を獲得した伊東は、この岐阜の地でさらに一歩踏み込み、屋根そのものを大地や雲の延長として連続させる試みに挑んだ。
池の水面に反射した揺らぐ光が、白い天井の曲面にそのまま映り込む。風が吹けば森の木々がざわめき、その音が建物内へと滑り込んでくる。建築が環境を支配するのではなく、環境の一部として溶け込むこの手法は、サステナビリティや環境共生が叫ばれる現在においても極めて先駆的な回答であり続けている。