やなせ氏が本格的にブレイクしたのは、テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』の放送が始まった69歳のときである。人生の大半を「売れない何でも屋」「遅咲きの劣等生」として過ごし、同世代の手塚治虫氏らの天才ぶりに強烈なコンプレックスを抱き続けた人物であった。
そんなやなせ氏だからこそ遺せた、数々の名言詩がある。
「絶望の隣には、希望がそっと座っている」
この言葉は、やなせ氏が生涯を通じて最も大切にした人生哲学だ。「絶望のどん底まで落ちたら、それ以上は落ちない。隣を見れば、いつの間にか希望がちょこんと腰掛けているものだ」という柔らかな語り口は、底知れぬ挫折を味わい尽くした老詩人だからこそ紡ぎ出せる真実である。空虚なポジティブシンキングではなく、哀しみを徹底的に引き受けた者だけが持てる静かな強さ。これが、仕事や人間関係、健康に悩む大人の心を解きほぐす至高の処方箋となっている。