入院から逝去に至るまで、馬場さんの病状は全日本プロレスの所属選手や幹部社員にすら一切明かされませんでした。病院内でも偽名が使われるほどの厳戒態勢が敷かれた背景には、妻・元子さんの固い決意と、馬場さん自身の強烈なプロ意識がありました。
「ジャイアント馬場は、ファンにとって絶対に負けない超人でなければならない」
これが馬場夫妻の一貫した美学でした。病に冒され、衰弱していく姿を公にすることは、全日本プロレスの看板を傷つけ、夢を見続けてくれるファンを失望させることと同義でした。元子夫人は批判や孤立を恐れず、看病の全責任を一人で背負い込み、夫の尊厳を守り抜く道を選びました。この徹底した情報管理があったからこそ、プロレスラー・ジャイアント馬場の神秘性と威厳は最期まで損なわれることがありませんでした。