太宰治『人間失格』の真相と結末|なぜ今も読者を惹きつけるのか

太宰治『人間失格』の真相と結末|なぜ今も読者を惹きつけるのか

太宰治『人間失格』の真相と結末|なぜ今も読者を惹きつけるのかの全貌を丁寧に掘り下げてご紹介します。

太宰治の『人間失格』は、「序景」「三通の手記」「後景」という枠物語(額縁構造)の形式をとっています。語り手である「私」が、ある女性から手に入れた3冊のノートと3枚の写真を提示するところから物語は始まります。

東北の裕福な家庭に生まれた主人公・大庭葉蔵(おおばようぞう)は、幼少期から他人の本音が理解できず、人間という存在に対して激しい恐怖を抱いていました。その恐怖を隠し、周囲に受け入れられるために彼が選んだ生存戦略が「道化(おどけ)」を演じることでした。おどけた仮面を被ることで家庭や学校での居場所を保とうとしますが、中学校で同級生の竹一に「ワザ(わざとやったな)」と見破られ、強い戦慄を覚えます。

上京して美術学校に進学した葉蔵は、都会の無頼派・堀木正雄と出会い、酒、煙草、女、非合法運動(左翼運動)に溺れていきます。銀座のカフェの女給・ツネ子と鎌倉の海で心中を図るものの、女性だけが命を落とし、葉蔵は生き残って自殺幇助の罪に問われます。その後、純真無垢な女性・ヨシ子と出会い結婚し、平穏な生活を取り戻しかけた矢先、ヨシ子が葉蔵の知り合いの商人に犯されるという凄惨な事件が発生。人の「無垢な信頼」さえも裏切られる現実に絶望した葉蔵は、睡眠薬中毒、モルヒネ中毒へと転落し、最後は東京の精神病院へと収容されます。

物語の結末において、葉蔵は27歳にして白髪混じりの40代に見えるほどの廃人となり、故郷の兄の手配で東北の鄙びた温泉地の古家に隔離されます。そして「いまは自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」と述懐し、人間としての資格を完全に失ったと独白します。しかし「後景」でノートの送り主であるマダムは、「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、気がきいて、お酒さえ飲まなければ、神様みたいないい子でした」と回想し、物語は深い余韻を残して幕を閉じます。

池田 達也
著者

池田 達也

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。