この稀代の詐欺事件は、エンターテインメント界にも深い爪痕を残した。希薄な人間関係と女性の情念を描く実録犯罪映画として企画されたのが、映画『エリカ38』である。
本作の原動力となったのは、名女優・樹木希林の鋭い洞察眼だった。樹木希林が生前、長年の友人であった浅田美代子の新境地を開くために自ら企画し、遺作のひとつとなったこの作品は、単なる事件の再現にとどまらない。浅田美代子は、欲望に憑りつかれ、自らもまた男たちに搾取されながら堕ちていく主人公・渡部聡子(エリカ)を凄まじいリアリティで熱演した。
単なる金銭欲ではなく、承認欲求と老いへの恐怖に抗い続けたひとりの人間の哀切を抉り出した本作は、日本映画史における傑出したクライムサスペンスとして高く評価されている。