子どもが手を引っ張ってきたとき、「自閉症になっては困るから、やめさせなきゃ」と焦り、手をパッと振り払ったり「手を引っ張るのはダメ!」と叱責したりしてしまう親御さんがいます。しかし、強引なやめさせ方は極めて逆効果です。
子どもにとってクレーン現象は、その時点で持ちうる「懸命なSOS・要求の伝達」です。それを拒絶されると、子どもは自分の意思を伝える術を完全に奪われ、強いフラストレーションから激しいかんしゃくや自傷、他害、あるいは人との関わりそのものを諦めてしまう引きこもりに発展しかねません。
家庭で実践すべき基本姿勢は、「要求を受け止めつつ、より高度な伝達手段にすり替えて教える」ことです。具体的な3つのステップを日常に取り入れてみてください。
ステップ1:子どもの要求を肯定し、言葉を代弁する
手を引っ張られたら、まず拒絶せずにその場所まで一緒に行きます。そして、子どもが触らせようとしている対象物を確認したら、「ジュースが飲みたかったんだね」「高いところの車、取ってほしかったのね」と、子どもが言いたかったであろう言葉を笑顔で代弁します。要求を理解してもらえたという安心感が、次のコミュニケーションへの意欲を育てます。
ステップ2:指差しの形を一緒に作る(モデリング)
親の手を使わせるのではなく、子どもの人差し指を優しく包むようにして「これ、だね」と対象物を指差す形を作ってあげます。「ちょうだい」「取って」といった簡単な手話(ベビーサイン)やジェスチャーを添えるのも効果的です。自分の身体を使って意思を伝える感覚を体感させます。
ステップ3:要求が叶う達成感を即座に与える
代弁や指差しの形を作ったら、「はい、どうぞ!」と速やかにおもちゃやお菓子を渡します。「手を引くよりも、指を差したり声を出したりしたほうが、素早く思い通りになる」という成功体験を積み重ねることが、クレーン現象の自然な卒業へと繋がります。
また、家庭内の構造化も有効です。要求の頻度が高すぎる場合、普段よく使うマグやお気に入りのおもちゃをあらかじめ子どもの手が届く低い位置に配置し、そもそもクレーンを使わなくても自力で行動できる環境を整えてあげることもストレス軽減に役立ちます。