日本の明治文学において、自然主義文学運動の双璧として並び立ったのが田山花袋と島崎藤村だ。詩人から小説家へと転身し『破戒』で確固たる地位を築いた藤村に対し、花袋は自身の内面を徹底して解剖するアプローチで対抗した。二人は互いの才能を認め合いながらも、表現の方向性を巡って常に火花を散らすライバル関係にあった。
本展示コーナーでは、両者の交友関係や往復書簡を通じて、明治期における「自己と他者」の描き方の違いを鮮やかに浮き彫りにしている。藤村の構築的で叙情的な文章と、花袋の泥臭くも鋭い現実観察。日本の近代小説がどのようにして成熟の領域に達したのか、二人の文豪が遺した軌跡を追うことで、そのダイナミズムが立体的に理解できる。