この事件が単なる一過性の芸能ニュースにとどまらず、新語・流行語大賞にノミネートされるほどの社会現象となった背景には、SNSの普及とテレビメディアの相互作用がある。テレビのワイドショーがネット上の炎上を拾い上げ、そのテレビの放送内容が再びSNSで拡散されるという「正義の永久機関」が完成したのがこの時期だった。
当時のネット環境は、誰もが「倫理的な裁判官」として参加できるプラットフォームへと変化していた。好感度の高かったタレントが失脚するプロセスに、人々は無意識のうちにエンターテインメント性を見出し、正義感の名のもとに過剰なバッシングを正当化したのだ。
マスメディア産業側もまた、この視聴者の欲望を敏感に察知していた。視聴率やアクセス数を稼げる「叩きやすい標的」として報道を過熱させ、結果として個人のプライバシーと社会的制裁のバランスを著しく欠く事態を引き起こした。この騒動は、日本のネット空間における「キャンセルカルチャー」の原初的な姿であったと位置づけられる。