興味深いことに、了解です歴史的経緯と真相を丹念に紐解くと、かつての日本企業で「了解」はごく一般的に目上にも使われていた時代が存在しました。
昭和後期から平成初期にかけて、無線通信や警察・自衛隊用語に由来する「了解」は、簡潔かつ確実に伝達を確認する合言葉として重宝されていました。当時のビジネス現場を取材したベテラン編集者や言語学者の指摘によれば、1990年代以前のオフィスでは、上司への口頭返答で「了解しました」と返す光景は決して珍しくなかったのです。
潮目が劇的に変化したのは2000年代中盤から後半です。ビジネス系ポータルサイトの台頭や「ビジネスマナー本」の出版ラッシュに伴い、差別化を図るマナー講師やメディアが「了解は目上に使ってはいけない」「正しくは承知いたしましたである」と声高に啓発し始めました。これがネット掲示板やSNS上で「上司に了解を使う若者は常識がない」という言説として増幅され、わずか十数年の間に「了解=失礼」という強固な社会的コンセンサスが人工的に作り上げられたという背景があります。
歴史的には後発の人工的マナーであるとはいえ、すでに現代のビジネスパーソンの間には「了解=同僚・部下向け」という共通認識が定着しています。「本来の意味は違う」と言語学的に反論したところで、相手が不快感を抱いてしまえばビジネス上の損失を被るのは自分自身です。現在の現場では、ルールが定着した事実を前提に行動するのが賢明な処世術となります。