あの日、事態を決定づけたのは甘さだった。2021年5月、本場所の最中に浮上した新型コロナ対策ガイドライン違反事件。本来であれば宿舎や部屋で感染予防に万全を期すべき時期に、夜間の不要不急の外出が報じられた。さらに事態を重くしたのは、初期の聞き取りにおける虚偽の説明だった。
コンプライアンス委員会による徹底調査を経て、日本相撲協会が下した裁定は「6場所出場停止および無給」という極めて重い厳罰。看板力士を襲った処分の裏には、社会規範を徹底できない組織の甘さを打ち消し、信頼回復を最優先する強い姿勢があった。師匠として指導にあたる高砂親方も監督責任を厳しく追及され、減給処分を受諾。看板を背負っていた高砂部屋にとっても痛恨の極みであり、こうして一人の大関が土俵から姿を消した。