近年、ネットやSNSを中心に「酸性ストレートならブリーチ毛でもノーダメージで矯正できる」「ケアブリーチを使っているから縮毛矯正と合わせても絶対に傷まない」という言説が広まっていますが、これは完全な誤解であり危険な盲点です。
確かに酸性ストレートは、従来のアルカリ縮毛矯正のようにキューティクルを無理やり押し広げないため、髪への手触りの優しさや自然な仕上がりという点では画期的です。しかし、「酸性だから傷まない」わけではありません。毛髪内部の結合を還元剤(スピエラやGMTなど)で切り、180度前後の高温アイロンプレスによって髪のタンパク質を熱変性させる物理作用そのものは、アルカリ矯正と全く同じメカニズムです。
むしろ酸性ストレートの薬剤は毛髪内部にじわじわと作用するため、毛髪診断を見誤ると「還元不足でクセが全く伸びない」か、逆に「アイロンの熱を置きすぎて髪が炭化(硬化してパサパサになる現象)する」という極端なトラブルを招きます。ブリーチ毛というデリケートなキャンバスに対して酸性ストレートを安全に作用させられるのは、全国の美容師の中でもほんの数パーセントに過ぎない卓越した専門技術者に限られます。
また、「ケアブリーチ」についても過信は禁物です。ケアブリーチに含まれるプレックス成分は、脱色時の毛髪破壊を軽減し、枝毛や切れ毛の発生率を約80〜90%抑制する優れた保護膜を形成しますが、メラニンを分解する強力な脱色作用そのものが髪に与えるアルカリ負荷を帳消しにする魔法の薬ではありません。ベースとなる髪の体力がすでに枯渇している場合、どれほど高濃度のケア剤を混合しても、崩壊のカウントダウンを止めることは不可能です。