北海道旧土人保護法の真実|なぜ制定され廃止されたのか同化政策の闇

北海道旧土人保護法の真実|なぜ制定され廃止されたのか同化政策の闇

北海道旧土人保護法の真実|なぜ制定され廃止されたのか同化政策の闇にまつわる興味深い視点を詳しく紐解きます。

日本国憲法が制定され、法の下の平等を定めた第14条が発効した後も、北海道旧土人保護法は「死法化(使われていない法律)」とみなされ、撤廃されることなく放置され続けました。約1世紀ものあいだ放置された法体系が動いた背景には、長年にわたる当事者の血のにじむような権利回復運動がありました。

決定的な転換点となったのは、1984年に社団法人北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)が総会で採択した「アイヌ民族に関する法律(案)」です。協会は旧土人保護法の即時撤廃とともに、民族としての自立を支える経済基金の創設や教育・文化の権利保障を政府へ強く働きかけました。

事態を大きく前進させたのが、1994年に参議院議員へ繰り上げ当選を果たした萱野茂(かやの・しげる)氏の存在です。アイヌ民族として史上初めて国政の場に立った萱野氏は、本会議や委員会で史上初となるアイヌ語による国会質問を決行。「アイヌの魂を国会に持ち込む」と宣言し、旧法がいかに当事者の人権を蹂躙してきたかを毅然とした態度で追及しました。

さらに1997年3月、札幌地方裁判所で下された「二風谷(にぶたに)ダム判決」が司法の側から決定打を放ちます。ダム建設に伴う土地収用の違法性を問うたこの訴訟で、裁判所は国側の裁量権逸脱を認めると同時に、「アイヌ民族は先住民族であり、固有の文化を享受する権利を有する」と日本の司法史上初めて明言しました。

国内外からの批判と司法判断に背中を押される形で、1997年5月、国会において「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(アイヌ文化振興法)」が成立。これに伴い、98年間にわたって存続した北海道旧土人保護法は名実ともに廃止されました。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。