インターネットのライフハック記事や動画サイトで長年まことしやかに推奨されているのが「使い古しの歯ブラシと歯磨き粉で磨く」という手法です。確かに、一時的にピカピカになったように見えますが、ジュエリーのプロや貴金属修復士の現場からはシルバー磨き歯磨き粉NGの理由として強い警鐘が鳴らされています。
一般的な練り歯磨き粉には、歯垢を除去するための微小な研磨剤(無水ケイ酸、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなど)が含まれています。これらの硬度は銀の表面硬度よりも高いため、ブラッシングによってシルバーの鏡面仕上げに無数のミクロなスクラッチ(微細傷)を刻み込みます。直後は光が乱反射して白く明るく見えますが、傷の隙間に皮脂や大気中の硫黄成分が入り込みやすくなり、「前よりも格段に変色しやすくなる」「表面が白っぽく曇り、本来の深みある艶が二度と戻らない」という取り返しのつかない事態を招きます。
また、家庭にある調味料を使ったシルバーアクセサリー酢と塩の洗浄方法についても正確な理解が必要です。耐熱容器にアルミホイルを敷き、酢大さじ2、塩小さじ1、お湯を混ぜて浸ける方法は、酸性条件下での還元作用を利用するため、軽度の硫化には有効です。しかし、酢に含まれる酢酸は濃度や放置時間によって金属表面の微細な腐食を招くリスクがあり、重曹に比べて酸のツンとした刺激臭も伴います。酸による地金への侵食や合金成分への影響を考慮すると、アルカリ性である重曹を用いた手法のほうが安全マージンが極めて高いのが実情です。