食品流通の世界には、消費者が普段意識していない産業構造のギャップが存在します。その代表例が「100%ジュース」の原価と製造プロセスです。
スーパーの棚に並ぶ安価な果汁100%ジュースのパッケージを注視すると、その大半が「オレンジ(主にブラジル産バレンシアオレンジの濃縮還元)」であり、「温州みかん100%ジュース」は同容量で2〜3倍の価格帯で販売されていることに気づくはずです。
この価格差が生じる理由は、加工特性の違いにあります。バレンシアオレンジは搾汁しても熱加工による風味劣化が起きにくく、酸味と糖度のバランスが一定に保たれやすいため、巨大タンカーで世界中に運ばれる工業的果汁原料として最適化されています。対する温州みかんの果汁は、加熱殺菌によって独特の「煮詰まり臭」が生じやすく、じょうのう膜の成分が混入すると品質が落ちやすいため、高精度な搾汁技術と厳格な温度管理を要するプレミアム品として扱われる傾向があります。
また、美容に関心の高い層でしばしば話題にのぼる「柑橘類を食べると紫外線で日焼けしやすくなる(ソラレンの危険性)」という情報についても、重大な誤解が含まれています。
光毒性物質であるソラレンを多く含むのは、主にグレープフルーツやレモン、ライムの果皮部分です。農研機構などの公的研究機関による成分分析では、温州みかんや一般的なオレンジの可食部に含まれるソラレンは検出限界以下または極微量であることが判明しています。朝食にみかんやオレンジを1〜2個食べた程度で紫外線過敏症を引き起こすリスクは科学的に否定されており、安心して日常の食卓に取り入れることができます。