本作のストーリーテリングにおいて特筆すべきは、「春・夏・秋・冬」という自然の移ろいと「愛の芽生え・幸福の絶頂・予兆と衰退・完全なる別離」という感情の起伏が完全に対称構造を描いている点です。
春のパートでは「桜の下での出逢い」という再生と始まりが描かれます。続く夏の情景では「打ち上げ花火の一瞬の輝き」に永遠を祈る姿が描かれますが、日本文学において花火は古くから「儚さ」と「終焉の前触れ」のメタファーとして機能します。すでにこの段階で、2人の時間に終わりが近づいていることが暗示されています。
秋に入ると「気温の低下」と「手の握りしめ」という身体的リアリズムを通じて、相手が遠くへ行ってしまう焦燥感が立ち現れます。そして冬、一面の銀世界は「無への帰帰」と「不在」を象徴し、主人公は独り残されて君の温もりを追憶する結末へと至ります。単なる季節の叙景歌ではなく、喪失を受け入れた人間が記憶を永遠の歌として昇華させる心の再生譚こそが、『四季刻歌』の真意と言えます。