長年ネットコミュニティやSNSでまことしやかに囁かれているのが、「カミソリで足を剃ると毛が以前より太く濃くなって生えてくる」という言説です。しかし、形成外科や皮膚科学の見解として、剃毛という皮膚表面の行為が毛根深部にある毛母細胞のDNAや太さの遺伝情報を書き換えることは医学的にあり得ません。
この錯覚が生じる理由は前述の通り、細く尖った自然な毛先が刈り取られ、太い毛幹の断面が垂直に伸びてくることで視覚的・触覚的なボリュームが増して見えるためです。また、十代の成長期に剃り始めた場合、第二次性徴に伴う自然な体毛の増加期と剃毛のタイミングが偶然一致したことで「剃ったせいで濃くなった」と誤認してしまうケースが後を絶ちません。
一方で、放置できない深刻な実害が「毛穴の黒ずみ」と「埋没毛(まいぼつもう)」です。
毛穴の黒ずみには二つの種類があります。毛根に残った毛の断面が透けて見える「毛根透け」と、カミソリの摩擦ダメージによってメラニン色素が沈着した「炎症後色素沈着」です。特に毛抜きを使って力任せに毛を引き抜く行為は、毛包内部で出血や微小な裂傷を引き起こします。傷ついた毛穴周囲の皮膚は防衛反応として角質を硬化させ、本来外に出るはずの毛が皮膚の下に閉じ込められて黒いしこり状になる「埋没毛」を量産します。一度硬化した皮膚から無理に毛をほじくり出そうとすると、一生消えない色素沈着を残すため、ピンセットによる引き抜きは即刻中止すべきです。