非常食といえば乾パンやおにぎり、白米のイメージが根強く残っていますが、災害社会学や栄養学の専門家は「洋風メニューの備蓄」を強く推奨しています。その根拠となるのが、災害時における「味覚疲労(Taste Fatigue)」の回避です。
災害発生から数日が経過すると、配給される食事はおにぎりや菓子パンなど炭水化物かつ塩分主体の淡白な味に偏りがちになります。この単調な食事が長期間続くと、被災者は「食欲はあるのに食べ物が喉を通らない」という生理的拒絶反応を示すことが過去の震災調査でも報告されています。
チキンライスの持つ適度な酸味や、ピラフのバター風味、ドライカレーの香辛料は、嗅覚と唾液分泌を直接刺激し、ストレスで低下した摂食中枢を活性化させます。心理学的にも、見慣れた洋食のフレーバーは日常の食卓を想起させ、極限状態における不安感を和らげる「コンフォートフード(安心感をもたらす食事)」として機能するのです。単なる栄養補給を超えたメンタルケアの観点からも、洋風ごはんの備蓄は極めて合理的な選択肢と言えます。