ハンター協会最高責任者であるアイザック=ネテロとの決戦は、種族の存亡を懸けた極限の論理戦でもありました。ネテロが半生を捧げて完成させた「百式観音」の零式すら耐え抜いたメルエムに対し、武力での勝敗は完全に王の軍配に終わっていました。
しかし、勝負の決着は武術の優劣ではなく、人類が積み重ねてきた底知れぬ悪意と技術によってもたらされました。ネテロが心臓の停止をトリガーにして起爆した小型爆弾「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」です。至近距離での核熱爆発によりメルエムは全身を炭化させられる致命傷を負い、護衛軍の献身的な細胞譲渡によって奇跡的に蘇生を果たしました。
だが、真の脅威は爆発そのものではなく、薔薇が撒き散らした「伝染性の遅効性猛毒」にありました。この毒は被爆者の体組織を内側から破壊するだけでなく、毒に侵された者自身が新たな毒の発信源となって周囲へ致死性の毒素を拡散させます。どんな念能力や肉体強化をも無力化する化学兵器の毒性により、無敵を誇った蟻の王は静かに生命のカウントダウンを迎えることとなりました。