選挙のたびにネット掲示板やSNS上で沸き起こるのが、「市議会議員など不要ではないか」「高すぎる報酬を削るべきだ」という極端な批判です。那覇市議会議員の報酬と年収について、月額約57万円、ボーナスを含め年収900万円前後という数字だけが切り取られ、「特権階級の利権」と決めつける言説が散見されます。
しかし、制度の裏側にある現場の実態を見落とすと、地方自治の本質を見誤ることになります。市議会議員の職責は、単に本会議に出席することだけではありません。年間に数千件に及ぶ市民相談への対応、複雑化する那覇市の一般会計予算(約1,500億〜1,600億円規模)の精査、行政施策の不正監視など、行政に対する強大なチェック機能を担っています。
もし議員報酬を極端に引き下げた場合、何が起きるでしょうか。地方政治の研究者が指摘するように、資金力のある資産家や高齢のリタイア層しか立候補できなくなり、現役世代や働く女性、子育て当事者の議会進出が完全に閉ざされてしまいます。問題の本質は報酬の多寡そのものではなく、「受け取っている高額報酬に見合うだけの提言や行政監視を行っているか」というアウトプットの質にあります。
有権者が注視すべき盲点は、形だけの議会出席で歳費を得ている「名ばかり議員」と、専門知識を駆使して条例提案や行政コスト削減を実現している「実務派議員」を冷徹に見分けることです。政務活動費の収支報告書や議会での一般質問の録画中継は、那覇市の公式ホームページで誰でも閲覧できます。情報を取りに行かずに感情的な不要論に同調することは、悪質な議員の温床を自ら許すことと同義です。
【プロの結論】政治社会学の視点から見出すべき教訓と市民の判断基準
地方政治を政治社会学の観点から読み解くと、沖縄の政治対立はかつての「保革イデオロギーの代理戦争」から、「生活課題解決の実効性を競うリアリズム」へと確実にシフトしています。中央政治の対立軸をそのまま地方議会に持ち込む手法は、日々の生活防衛に追われる現役世代にとって急速にリアリティを失いました。
今後、那覇市政や候補者を評価・監視するにあたって、市民が持つべき判断基準は極めて明快です。
【注視・応援に値する議員の条件】
自分の得意分野(教育、福祉、防災、観光DXなど)において、那覇市独自の具体的な政策提言をデータに基づいて行えること。SNSや市政報告会を通じて、議会での質疑内容と賛否の理由をわかりやすい言葉で市民へ定期的に報告していること。
【見切りをつけるべき議員の条件】
選挙期間中だけ抽象的なスローガンを叫び、任期中の活動記録がほとんど残っていないこと。後援会幹部や業界団体の利害関係のみを代弁し、議会質問を一度も行わない、あるいは他人の質問の焼き直しでお茶を濁していること。
有権者が無関心になればなるほど、組織票を持つ一部の既得権層に都合の良い市政運営が行われます。投じた一票、あるいは棄権した態度は、必ず公共料金の改定や福祉サービスの質、街のインフラ整備という形で自らの生活に跳ね返ってきます。