慎重に作業していても、古いヴィンテージワインや乾燥した環境に置かれていたボトルでは、コルクが途中で「バキッ」と折れてしまうアクシデントが起きます。この局面で慌てて真上から再度スクリューをねじ込むと、残ったコルクが奥へ押し出されるか、粉々に砕け散ってしまいます。
まず把握すべきは、そもそもワインコルク抜けない理由の多くが「コルクの乾燥収縮」または「合成コルク(樹脂製)の強い摩擦力」にあるという事実です。ワインが長期間立てた状態で保管されていると、内側からコルクが湿潤を失ってガラス内壁に癒着し、引き上げの剪断応力に耐えられなくなります。
コルクが折れた時の対処法としてプロが実践するのは「アングル・アプローチ(45度斜め刺し)」です。
1. 残留したコルクの表面を布巾で拭き、破片を取り除きます。
2. ソムリエナイフのスクリューを、コルクの断面の中心ではなく「ガラス内壁に近い縁の部分」から45度の角度で慎重に刺し込みます。
3. ある程度刺さったらスクリューをゆっくりと垂直方向に起こし、コルクの残存部全体を貫通しないギリギリの深さまで回し入れます。
4. スクリューが下側の健康な組織を捉えたら、レバーをボトル口にかけて優しく引き上げます。ガラスとコルクの隙間に空気を通すイメージを持つことが肝要です。
もし残存部が薄すぎて再挿入が不可能な場合は、前述の「押し込み法」に切り替えてボトル内に完全に落としてしまうのが正解です。コルク片がワインに浮いてしまった場合でも、慌てる必要はありません。コーヒー用の無漂白ペーパーフィルターや、目の細かいステンレス製茶こしをセットしたカラフェ(水差しや別の清潔な瓶)にワインを一度ゆっくり移し替える「デキャンタージュ」を行えば、ワインの風味を損なうことなく澄んだ状態を取り戻せます。