日本国内でトップを極め尽くした人物であっても、異国の地での再出発は決して平坦なものではなかった。サンディエゴ・パドレスでエース級の活躍を見せる夫の過酷なシーズンに寄り添うため、生活の拠点をアメリカへ移した当時の葛藤は想像を絶する。
自身の競技人生を完全に横に置き、一言も通じない言語環境の中で子育てと家事に追われる日々。かつて世界の頂点に立ったというプライドを一旦手放し、一人の人間として、そしてパートナーとして自分を再構築する必要があったからだ。
彼女は後年、渡米直後の孤独感やアイデンティティの模索について静かに語っている。完璧を求めすぎるがゆえに自分を追い詰めた夜もあった。しかし、マットの上で培った諦めない心と柔軟な思考が、少しずつ彼女を前へと動かしていったのである。