手帳の申請を検討するにあたり、最も多くの人が懸念を抱くのが「ASD障害者手帳のメリットとデメリット」のバランスです。公的支援や税金面での恩恵が語られる一方で、取得することによる不利益や社会生活への影響について、不透明な情報がネット上を飛び交っています。
客観的なメリットとして大きいのは、前述した所得税・住民税の軽減に加え、JR各社をはじめとする鉄道・バス等の交通費割引、携帯電話料金の割引、美術館や映画館などの公共・民間施設での利用料優遇です。さらに最大のメリットといえるのが、法定雇用率に基づく障害者雇用枠への応募資格と、利用料が原則免除(または軽減)される就労移行支援の利用権を得られる点にあります。
一方で、申請前に必ず押さえておくべきリアルなデメリットや盲点も存在します。筆頭に挙げられるのが「民間の生命保険や医療保険への新規加入制限」です。手帳の取得そのものが直接の加入拒否理由になるわけではありませんが、手帳取得の前提となる「精神科通院歴・確定診断」は保険会社への告知義務事項に該当します。この告知により、通常の医療保険に加入できなかったり、精神疾患免責の条件が付加されたり、割高な引受基準緩和型保険しか選べなくなるケースが頻発します。すでに加入している既存の保険が失効することはありませんが、将来的な保険見直しを計画している場合は注意が必要です。
また、診断書の作成費用(医療機関により異なり、5,000円〜1万円程度が相場)や2年ごとの更新手続きに伴う時間的・金銭的コスト、そして当事者自身が「障害者」というラベルを引き受けることに対する心理的抵抗感(心理的スティグマ)も無視できない実態といえます。