昆虫の多くが数ヶ月から1年程度でその短い生涯を終えるのに対し、大型タランチュラの仲間は驚くほど長いライフサイクルを持っています。特に世界最大の蜘蛛であるゴライアスバードイーターの寿命の性差は、生物学的に非常に特異なコントラストを描きます。
オスの場合、性成熟に達するまでに約3年から4年を要します。成熟脱皮を迎えたオスは、前脚にメスを抑え込むための特殊な突起、触肢に精子を受け渡す器官を発達させます。繁殖期を迎えるとオスは命がけでメスの巣穴を探し出し、激しい求愛行動を行いますが、交尾に成功したか否かにかかわらず、成熟後は脱皮を行えなくなり、わずか1年から2年以内に寿命を迎えます。生涯年数は長くても3年〜6年程度です。
これに対し、メスの生命力は圧倒的です。成熟後も年に一度のペースで脱皮を繰り返し、失った脚すらも数回の脱皮を経て完全に再生させながら、15年から最長で25年前後という驚異的な長寿を全うします。これは犬や猫の平均寿命を大きく上回り、中型哺乳類に匹敵する時間の長さを熱帯の暗闇の中で生き続けることを意味します。
なお、SNS等で拡散される「世界最大のクモ 画像比較」には注意が必要です。しばしばカメラのレンズの至近距離に蜘蛛を配置し、後方の人物を遠くに立たせる「遠近法のトリック(強制遠視)」によって、まるで人間の子供や大型犬と同じサイズに見せかけたフェイク画像が大量に流通しています。実寸のゴライアスバードイーターはディナープレートサイズであり、それ単体でも無脊椎動物としては常軌を逸した巨大さですが、ネット上の誇張された演出を客観的に見抜くリテラシーが求められます。