刺青とタトゥーの決定的な違いとは?針の深さから温泉基準まで徹底解明

刺青とタトゥーの決定的な違いとは?針の深さから温泉基準まで徹底解明

刺青とタトゥーの決定的な違いとは?針の深さから温泉基準まで徹底解明について専門的な視点から解説いたします。専門家の見解をご覧ください。

日本のタトゥー史において最大の転換点となったのが、大阪府の彫師・増田太輝氏が医師法違反(無免許医行為)に問われた、いわゆる「タトゥー彫師医師法裁判」です。

2015年、大阪府警は「針先に色素を付けて皮膚に穿刺する行為は、保健衛生上の危害を生じるおそれがある医行為である」として、医師免許を持たずにタトゥーを施術していた増田氏を略式起訴しました。一審の大阪地裁は罰金15万円の有罪判決を下しましたが、弁護団は「タトゥーは憲法が保障する表現の自由や職業選択の自由に関わる文化行為であり、医療行為ではない」と徹底抗戦。2018年の大阪高裁で逆転無罪を勝ち取り、検察側の上告を経て、2020年9月16日、最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)が上告を棄却、無罪が確定しました。

最高裁は判決文の中で、医行為とは「医療及び保健指導に属する行為」であり、タトゥーの施術は「美術的な意義を有する社会的な風俗として受け継がれてきたもので、医療を目的とする行為とは根本的に異なる」と明快に判示しました。この歴史的決定により、日本国内で彫師という職業が刑事罰の対象から公式に除外され、法的生存権を勝ち取ったのです。

しかし、この勝訴が直ちに「社会的な完全包摂」をもたらしたわけではありません。医師法違反のくびきから解放された一方で、日本にはいまだタトゥー施術を規律する「彫師の公的資格制度・衛生管理ライセンス法」が存在しないという制度的空白が生じています。業界団体である「日本タトゥーイスト協会」などが自主的な衛生管理ガイドラインや講習会を運用しているものの、法的義務を伴う許認可制度がないため、依然として衛生基準は各スタジオのモラルに委ねられている実情があります。

就労環境や日常生活における「社会的評価」の壁も厚く立ちはだかります。民間企業の就業規則では「タトゥーの露出禁止」や「入社時の申告義務」が広く維持されており、金融機関、ブライダル、航空、医療・福祉業界などでは内定取り消しや服務規程違反による懲戒処分のリスクを伴います。生命保険の加入審査においても、肝炎ウイルスなどの感染リスクを警戒し、告知義務違反や引き受け制限の対象となるケースが少なくありません。法的に無罪となったことと、日本社会の世論が身体装飾を無条件に歓迎することは全く別の問題として推移しています。

林 結菜
著者

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。