一般的なスーパーのスパイス売り場に足を運ぶと、手のひらサイズの小さなガラス瓶(約15g)に入ったクミンパウダーが200円前後で販売されています。100g換算にするとおよそ1,300円から1,500円という高級品です。ところが、街のネパール食材店に一歩足を踏み入れると、100g入りの袋が150円〜250円、1kg単位の大袋でも1,000円前後で山積みされています。
この極端な価格差が生まれる決定的な理由は、主に3つの流通構造にあります。
第1に、業務用ルートとの一体化です。多くのネパール物産店は、周辺で営業する数多くのインド・ネパール料理店(いわゆる「インネパ店」)への卸売拠点を兼ねています。コンテナ単位で現地やインドの集散地から大量一括仕入れを行っているため、中間マージンが極限まで削ぎ落とされています。
第2に、過剰包装の徹底的な排除です。国内大手メーカーの小瓶スパイスは、湿気防止の二重キャップや洗練されたガラス容器、国内流通用のデザインパッケージに莫大なコストが投じられています。対してネパール輸入食材店で扱われる商品は、極めてシンプルな厚手ポリ袋に密封された実用本位のパッケージが大半を占めます。
第3に、在日同胞コミュニティを支えるライフラインとしての性格です。店主たちにとってこれらの店舗は、同胞が母国の味を日常的に食べ続けるための生活拠点であり、生活必需品であるレンズ豆(ダール)や米で法外な利益を取る発想がありません。3〜5%程度の薄利多売モデルを維持し、国際送金サービスやSIMカード販売などの手数料収入を複合的に組み合わせることで、低価格での食材提供を成立させています。