ツーシームが打者にとって厄介な球種とされる理由は、ストレート(フォーシーム)と全く同じ球速帯・投球フォームから、打者がスイングを始動した瞬間に軌道が変わる点にあります。人間の動体視力において、リリースからホームプレート到達までの約0.4秒のうち、打者が球種を識別してスイング軌道を修正できるのは前半の0.15〜0.2秒程度です。ツーシームはまさにその判断リミットを過ぎた「手元」で失速・変化します。
物理的な側面から見ると、ツーシームが沈む背景には「シーム・シフト・ウェイク(SSW:Seam-Shifted Wake)」と呼ばれる流体力学現象が深く関わっています。フォーシームが1回転で4本の縫い目が均等に空気を切り裂くのに対し、ツーシームは2本の縫い目が空気と非対称に接触します。これによりボールの片側に空気の剥離(後流の偏り)が生じ、マグヌス効果(浮き上がる揚力)が打ち消されて下方向への急激な揚力低下と横方向への変化が発生します。
さらに、指先の力点によるバックスピン量の減少もツーシームが落ちる理由の核となります。フォーシームよりも回転数が意図的に100〜200rpm程度抑えられるため、重力に逆らう上向きの揚力が失われ、打者の錯覚として「ストライクゾーンから急激にワンバウンド方向へ落ちる」軌道が完成するのです。