「生牡蠣を食べると当たりやすい」というイメージがありますが、岩牡蠣と真牡蠣では警戒すべき食中毒の原因菌・ウイルスが根本から異なります。厚生労働省の食中毒統計および公衆衛生研究データに基づき、そのメカニズムを整理します。
真牡蠣(冬期)の主因:ノロウイルス
冬場の真牡蠣で発生しやすいのがノロウイルスです。ウイルスは海水温が低下する冬場に不活化しにくく、河川から海へと流出したウイルスを真牡蠣がプランクトンとともに大量に濾過・蓄積することで起こります。症状としては、摂取後24〜48時間で激しい嘔吐や下痢、発熱を引き起こします。
岩牡蠣(夏期)の主因:腸炎ビブリオ菌
夏場の岩牡蠣で注意すべきは、ウイルスではなく海水中に常在する細菌である「腸炎ビブリオ」です。好塩性の細菌であり、海水温が20度を超える夏場に爆発的に増殖します。ただし、腸炎ビブリオは真水(水道水)や酸に極めて弱いという特徴があります。
「どちらが当たりやすいか」という問いに対しては、流通管理が適切であれば確率に大きな差はないものの、感染源の性質が全く異なるというのが科学的な実態です。岩牡蠣は外海(プランクトン密度が適度で生活排水の影響が極めて少ない沖合)の清浄海域で採取されることが多いため、ノロウイルスの蓄積リスクそのものは真牡蠣に比べて極めて低い水準に保たれています。