ここからは、作品の核心に踏み込む。未視聴の読者は注意してほしいが、この物語の本質は結末を知っても損なわれない構造になっている。むしろ結末を知った上で見返すと、伏線の精密さに二度驚くことになるだろう。
物語の主人公は、都内の広告代理店で働く28歳の女性・日向夜子(ひなた・ようこ)。彼女は幼い頃から母親に「お前は醜いから、せめて頭だけは良くなりなさい」と言われ続けて育った。夜子は努力の末に有名大学を卒業し、一流企業に就職する。しかし職場では容姿を理由にした陰口に晒され、恋愛では相手の優しさを素直に受け取れない。彼女は自分のことを「空を飛べないよだか」だと自嘲する。
物語が転換するのは、ある雨の夜、夜子が高校時代の同級生・羽鳥昴(はとり・すばる)と再会してからだ。昴はかつて夜子をいじめから守ろうとして逆に集団から排除された過去を持つ。二人は互いの傷をなぞるように距離を縮めていくが、夜子の母親が二人の関係を知り、昴の前で夜子を「私が作り上げた作品」と呼んだことで、物語は一気に崩壊へ向かう。
最終話で夜子は、母親と向き合い、こう言い放つ。「お母さんのためじゃなく、お母さんのいない空を飛ぶ。それが私の復讐です」。この台詞は原作にはなく、ドラマ版の脚本家が原作者と協議の上で生み出したものだ。視聴者からは「この一言に救われた」「録画を何度も巻き戻した」と大きな反響を呼んだ。
結末はハッピーエンドともバッドエンドとも言い切れない、余白のある幕引きとなっている。夜子は昴とともに東京を離れる。しかしそれは「逃げ」ではなく、自らの足で選び取った「新しい空」への移動として描かれる。最終カットで夜子が空を見上げる表情は、涙ではなく、初めて自分を許した者の静かな微笑みだ。