舞台での評判は瞬く間に映画界へと伝わり、1970年には山田洋次監督の国民的人気シリーズ第5作『男はつらいよ 望郷篇』への出演が決まる。作品の中で演じたのは、葛飾柴又の寅さんが心を寄せる豆腐屋の娘・節子役。素朴でありながらどこか哀愁を帯びた美しさは、スクリーンを通じて観客の心を一瞬で掴んだ。
松竹映画の黄金期を代表する名作において、長山藍子の存在感は絶大だった。主演の渥美清は、彼女が醸し出す飾らない人柄と気品を絶賛。寅さんとのコミカルでありながら切ない掛け合いは、シリーズ屈指の叙情名場面として今なおファンに語り継がれている。昭和映画の記憶に鮮烈な光を落としたマドンナとしての姿は、まさに時代が求めた理想の女性像そのものだった。