爪は本来、半透明の角質板であり、それ自体が自発的に黒くなることはない。色をつけているのは、皮膚の深部に存在する色素細胞「メラノサイト」だ。爪の製造工場である爪母に存在するメラノサイトが何らかの刺激によって活性化し、過剰なメラニン色素を生成すると、それが爪甲へと染み出して黒い縦帯を作り出す。
日本皮膚科学会の報告によれば、日本人を含むアジア人は白人に比べて手足の末端、特に親指(母指や母趾)に色素沈着を起こしやすい傾向がある。鉛筆の芯が肌に刺さったような外傷や、窮屈な靴による圧迫、さらには一部の薬剤の副作用や全身性疾患によってメラノサイトが一時的に刺激されることも珍しくない。つまり「黒い線=即座にがん」というわけではない。だが、刺激要因がないにもかかわらずメラノサイトが無秩序に増殖を始めている場合、それは細胞の癌化を疑うべきサインとなる。