日本のアパレル市場において、一度完全撤退した外資系ブランドが再上陸してこれほどの成功を収めるケースは極めて異例です。時計の針を巻き戻すと、チャールズ&キースは2013年に大手アパレル企業との合弁事業として華々しく日本初上陸を果たしました。原宿をはじめとする一等地に出店攻勢をかけたものの、わずか3年余りが経過した2016年末、国内の全13店舗を一斉に閉鎖して撤退に追い込まれた過去があります。
ファッションビジネス関係者の証言や当時の業界分析によると、初上陸時の失敗要因は「急速な多店舗展開に伴うブランドイメージの希釈」と「ファストファッションとラグジュアリーの中間という新しい立ち位置が日本市場の消費者に浸透しきっていなかった点」にありました。中間マージンや運営コストが重くのしかかり、当時のビジネスモデルでは収益化の維持が困難だったのです。
しかし、シンガポール本社は日本市場の潜在力を決して見限っていませんでした。チャールズアンドキース再上陸理由の根幹にあるのは、「100%自社出資の直営化(CHARLES & KEITH JAPAN設立)」による舵切りと、「徹底したデジタルファースト戦略」への転換です。2018年秋、ブランドは名古屋栄に路面店をオープンさせて静かに再上陸を果たしました。この第2章では、かつてのように闇雲に店舗を増やすのではなく、まずチャールズアンドキース公式通販とSNS運用を基盤にして熱狂的なファンコミュニティを醸成。その上で、顧客とのリアルなタッチポイントとして採算性の高い都市部を選定し、実店舗を再構築していったのです。
グローバル戦略においても、タイ・バンコクのSiam Squareブティックで発表された世界初の円柱型円形LEDラップディスプレイのように、実店舗を「単にモノを売る箱」から「デジタルと連動した体験型メディア」へと昇華させています。この洗練されたリブランディングが、2020年代半ば以降の日本市場で爆発的な支持を集める決定打となりました。