日本国内の一般的な認知が「お騒がせアスリート」で止まっているのに対し、欧米のスノーボードコミュニティにおける国母和宏の評価は「生ける伝説(Living Legend)」です。この極端な内外ギャップを理解する鍵が、彼が2010年代以降に打ち立てたバックカントリーでの金字塔です。
人工的に整備されたハーフパイプではなく、ヘリコプターでアラスカやカナダの断崖絶壁に降り立ち、雪崩の危険と隣り合わせの急斜面を時速80キロ超で滑走しながら巨大なジャンプを繰り出す。そのライディングスタイルは、極めて高いスピード域でありながら一切のブレがなく、猫のようにしなやかです。
アメリカの大手スノーボード誌『Snowboarder Magazine』が選出する世界最高峰の栄誉「Rider of the Year」において、アジア人として初となる選出を果たした実績は、スノーボードの歴史そのものを塗り替えた瞬間でした。近年YouTubeや各種ストリーミングで公開される『Kamikazu』をはじめとする映像プロジェクトは数百万回再生を記録し、コメント欄には英語やフランス語、ドイツ語で「彼こそがスノーボードの神だ」「時代が彼に追いついていなかっただけだ」という熱狂的な賛辞が並びます。