私たちが日常的に目にする「鏡の中の顔」と、他者が肉眼で見ている「現実の顔」の間には、光学的な絶対境界が存在します。鏡が映し出しているのは、光の反射による左右反転の世界(鏡像)です。右手を挙げれば鏡の中の人物も右手側の腕を動かしますが、これは対面した他者から見れば左手側を動かしている状態に他なりません。
人間の顔は、一見整っているように見えても、骨格の成長差、噛み癖、表情筋の使い方によって誰しも左右非対称を抱えています。左右の目の大きさ、眉の角度、口角の上がりやすさ、フェイスラインのシャープさには必ず数ミリ単位の差異が存在します。鏡を見るとき、私たちはその「反転した左右非対称」を無意識のうちに脳内で補正し、見慣れた基準値としてインプットしています。
ところが、他撮り写真や左右反転補正を行わないノーマルカメラで撮影された瞬間、脳内には「左右が逆になった非対称性」が突如として突きつけられます。パーツの傾きやバランスが普段の記憶と正反対の位置に配置されるため、脳の認識パターンが拒絶反応を起こし、猛烈な違和感や「不気味さ」を抱くのです。この現象こそが、写真の自分を見た際に生じる居心地の悪さの正体です。