バニシングツインとは、多胎妊娠(主に双子)が確認された後、ごく初期の段階で一方の胎児が子宮内で発育を停止し、母体組織や胎盤へ徐々に「自然吸収」されて消失する病態を指します。かつて超音波検査の精度が低かった時代には、そもそも双子であったことすら認識されずに「通常の単胎妊娠」として出産に至っていた事例が多くを占めていました。しかし、妊娠5週前後から胎嚢を鮮明に確認できるようになった結果、この現象が可視化されるようになりました。
発生する時期は、多くが妊娠6週から10週前後の妊娠初期に集中しています。日本産科婦人科学会などの診療指針や関連疫学データによると、自然妊娠・生殖補助医療(IVF等)を含めた双胎妊娠全体における発生頻度は、およそ10%から15%前後と推計されています。決して極めて稀な異常事態ではなく、臨床現場では日常的に遭遇する初期流産の一形態です。
亡くなった胎児と胎嚢は、母体や絨毛組織の酵素の働きによって数週間から数カ月かけて分解され、水分や組織が子宮壁や胎盤に緩やかに吸収されます。そのため、通常の流産のように子宮内容除去術(掻爬手術)を行う必要はなく、そのまま経過観察となるケースが標準的です。